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世界の路地裏 40 スペイン・バルセロナ 1
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20代半ばを1年間過ごしたバルセロナは第二の故郷だ。スタジオマンで蓄えた資金を懐に、とにかく行ってみた。世界を回るカメラマンにスペイン語は必須に思えたし、何より海外で物怖じしない度胸をつけたかった。

 

初めてのヨーロッパでは、重厚な街並みに圧倒された。木造アパート暮らしの若者には、歴史の底力を見せつけられる思いだった。しかも道ゆく女性がみんな綺麗なこと!

 

知人の紹介で安アパートを借り、1日5時間コースの語学学校の手続きをした。この学校はスペイン語しか使わず授業をするのだが、母国語に一旦翻訳するより、体によく染み込んだ。ただしその日に出た単語は翌日までに覚えていないと、次の授業についていけないというスパルタ式だ。毎日何十もの単語暗記があり、頭が破裂しそうだったが、一ヶ月後には日常生活に不自由はなくなった。

 

頭が痺れた時は、細い路地の入り組んだ旧市街を散歩する。そこは庶民の生活の匂いに溢れた、ネオリアリズモ映画の世界。人の暮らしはどこも変わりはないのだと教えてくれた。



# by saito-r | 2018-11-23 09:12
世界の路地裏 39 ロシア・イルクーツク
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かつて撮った写真を見返して、「本当に自分が撮ったのか」と思うことがある。自画自賛ではない。いい写真が生まれる時は、自分の能力を超えた大きな力が働いていると言うことだ。アスリートがよく言う「ゾーンに入る」という感覚に近いかもしれない。集中力が高まり、自意識など遠くへ飛んでいってしまった時、予想もしていない映像が、向こうからやって来る感じだ。ロシアを旅した時も幾度かこんな感覚に襲われた。

イルクーツクはシベリアの中心都市。冬はごく普通にマイナス20度ぐらいになる。驚くのはこんな寒い中でも、市民はしっかり着込んで、ゆったりと散歩を楽しんでいることだ。なんという豊かな時間だろう。
感動に立ち止まりカメラを構えていると、足の裏から底冷えがじわじわと這い上がって来る。寒さのあまり意識がぼんやりとして来るほどだ。歩き続けていないと、体温の保持ができないのだ。

今日も絶妙のタイミングで、人々が登場する。辛い寒さも吹き飛ぶ嬉しい瞬間だ。(公明新聞9月30日付掲載)

# by saito-r | 2018-10-02 17:24
世界の路地裏 38 インド・ハイデラバード
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子供たちの働く姿を見ると、何かしら胸に疼くものを感じる。家業の手伝いもあれば、搾取に近い労働現場もあった。ここインドでも、あちらこちらで働く子供たちがいた。デリーの下町の理髪店では、客の髭剃りをする、小学校3年生ぐらいの小さな子がいた。ただその手並みは鮮やかで、客の評判もよかった。

ここハイデラバードの下町にも、中古の中古の自動車部品を再生する工場で働く子供たちがいた。大人と一緒に油まみれになって、汗を流していた。工場のボスが怖い顔で近づいて来て、「お前はユニセフの回し者か」と聞かれたので、ただの旅行者だと答えたら、撮影が許された。救いは当の子供たちが、大人に負けない仕事をしている自分たちに誇りを持っている姿だった。

ハイデラバードは近年、インドのIT産業都市として急成長している。新市街には世界のIT企業が巨大なオフィスビルを構え、バンガロールに続けと、しのぎを削っている。児童労働と最先端のITが同じ街に同居しているのも、今のインドの現実だ。
(公明新聞9月16日付掲載)

# by saito-r | 2018-09-21 16:27
世界の路地裏 37 中国・北京
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路地の真打ちは、北京の胡同(フートン)だろう。巨大ビルが増殖する北京にあって、一歩裏に回ると、元、明、清の時代に出来た四合院と呼ばれる建物の周りに、無数の路地が張り巡らされている。

ここには庶民の生活の全てがあり、ただ歩いているだけでも退屈することがない。道端で野菜を並べる人々、小商いをする店、麻雀に興じる人々、ススで真っ黒な顔をして練炭を売り歩く男、井戸端会議のおばさん、リタイアした老人たちもいい顔をして座っている。
残念なことに2008年の北京オリンピック前後には、再開発の名の下、その多くが破壊されたが、幸い一部の胡同は命拾いした。

夕方、家の前にコオロギの入った容器をたくさん並べ、その餌を作っている男がいた。中国には闘蟋(とうしつ)と呼ばれるコオロギ相撲の伝統があり、千年以上の伝統があるそうだ。強い雄を育てるため、餌にも気を配り、大切に育てるのだ。働き盛りの男が、こんなことに熱中するのも中国の懐の深さか。
何はともあれ、胡同は今も北京っ子の大切な心の故郷なのだ。
(公明新聞9月2日付掲載)

# by saito-r | 2018-09-05 08:43
世界の路地裏 36 ロシア・サハリン州
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サハリンには何度も訪れたが、初めて行った1992年のことが印象深い。北海道の宗谷岬から、わずか43キロのこの地は、当時近くて遠い所だった。
旧樺太住民の墓参団の船に、稚内から一緒に乗船させてもらった。戦後命からがら引き揚げて来た方々も、すでに高齢になっていた。

コルサコフ港に到着すると、ポロナイスク(敷香)の墓参団と一緒にマイクロバスに乗り込んだ。車窓には、宇宙にロケットを飛ばす国とは思えない貧しい光景が広がっていて、衝撃を受けた。
バスに2日間揺られてポロナイスクに到着。今は何もないこの町も、以前は日本最北町として、防衛の重要な拠点だったという。昭和の大横綱大鵬も、ここで生まれている。

墓参団の方々は、かつての面影が全くないふるさとに、落胆を隠せなかった。墓石すら残っていなかった。
私はまた違う感慨に打たれていた。植生といい、木造家屋が立ち並ぶ光景は、私が子供の頃の、ふるさと北海道の風景そのものだった。出会った少年と少女の姿に、幼い頃の私と妹の姿が重なった。(公明新聞8月19日付掲載)

# by saito-r | 2018-08-21 14:01


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