Photographer Ryoichi Saito Column & Information

文藝春秋の季刊誌「嗜み」12号が発売になりました。
今回は俳人の黛まどかさんと福島県の飯館村、宮城県の仙台市、塩竈市、石巻市などを訪ねました。
黛さんは震災後の４月にボランティアで石巻の避難所を訪れていて、飯館村は震災前から村おこしの句碑づくりで深いご縁のある村とのこと。
石巻はがれきの撤去こそようやくめどが立ってきたものの、復興にはまだ時間がかかると思いました。ただ、あれだけのがれきがこうやってかたづいていく様子には、ささやかな希望も感じました。
一方飯館村は今も村民のほとんどが避難していて、本来田畑だった場所に草がぼうぼうと生えていました。数名常駐している村役場の方にお話をうかがうことができました。「除染と言いますが、いくら家のまわりを除染しても、山からは雨のたびに放射線物質が里におりてくるんですよ。この山をすべて除染するなどということが、できるのでしょうか」と疲労を滲ませた表情で語られる言葉を重く受け止めました。
今回ひとつの救いだったのが塩竈の「すし哲」さん。こちらには昨年6月に取材でおじゃましていました。やはり津波の被害を受け、しばらくご苦労をされていたのですが、今は元通りの姿でお店を営業していました。ご主人の笑顔に重い心が溶かされる思いがしました。黛さんが選者をつとめた飯館村の「あいの句碑」　　　　　　　　飯館村役場石巻市石巻市津波から復活した塩竈の「すし哲」さん

'89年、柳ジョージさんの「NIGHT OWL CLUB」のLP（！）ジャケットの撮影をさせていただきました。LPジャケットは30cm四方のサイズ表裏両面で、その音楽世界を映像化するという、面白い仕事でした。スタジオにはアーティスト本人はもちろん、ディレクター、デザイナー、スタイリスト、カメラマンといった人たちが集まって知恵を出し合う熱い現場でした。
その後数年でCDの時代になって、あの熱気はなくなり、私もそちらの世界とはすっかり縁遠くなってしまいました。今はそのCDも売れなくなり、音楽をダウンロードする時代に。時の流れをしみじみと感じます。
ジョージさんは、芸能人らしいところが少しもない腰の低い方で、スタッフみんなにこまやかに気をつかう姿には、こんなに気をつかって疲れてしまわないのだろうかと心配になるほどでした。五木寛之さんが言った「よき人先に逝く」という言葉がふと浮かびました。合掌。

安野光雅さんのムック本のお手伝いをさせていただきました。
写真は1994年のもので、安野さんが68歳のときのものです。年齢をまったく感じさせないエネルギー、好奇心の旺盛さ、さまざまなことに関する造詣の深さは、画家という枠に収まらない大きな方だなあと感じ入った記憶があります。山の上ホテルのラウンジで、数学者の故森毅さんとの丁々発止のやりとりのおもしろさは、今も忘れられません。そんな異能の画家、安野光雅さんの「怪人」ぶりを、さまざまな方が証言。安野さんの創作の秘密がぎっしりと詰まった一冊です。

コニカミノルタプラザで開催された写真展「佳き日 A Good Day」が無事終了しました。
台風一過の怪しい空模様でしたが、大勢の方々にご来場いただくことができました。
あまり明るい話もない昨今ですが、少しでも心が晴れていただけたのなら、作者としてこれ以上の喜びはありません。
また近い将来みなさまにお目にかかれる日を楽しみにして、また日々の撮影に励んでいきたいと思います。
ご来場、厚く御礼を申し上げます。

新宿コニカミノルタプラザでの写真展「佳き日　A Good Day」が始まりました。
今回は通常の展示の他に、小谷和也音楽、緑川智紀構成によるDVDバージョンもご覧いただけます。
こちらは展示とは別セレクションになっていて、約100カットの映像をお楽しみいただこうという趣向です。
残暑のひととき、美しい日本の光景にしっぽりと浸ってください。
９月６日（火）まで。（最終日は午後３時までです）