大学4年の1980年、ふるさと札幌に帰省した折、高校の同級生が、「北海道大学の恵迪(けいてき)寮に行ってみたら。おまえの好きそうな所だ」という。早速行ってみると彼の言う通りだった。
広い北大構内の原生林を思わせる中に、古い木造2階の建物が4棟立っていた。建物の中に入り込み、図々しく部屋を覗くと、その年季の入り方と、散らかりように息を飲んだ。
一部屋はかなりのスペースがあり、概ね5人で住んでいるようだった。住人はバンカラなコワモテの人もいたが、どの部屋でも気さくに招き入れてくれて、話せばやはり同世代の学生だった。数年後はこの建物の取り壊しも決まっているとかで、これは記録に残しておかねばと、カメラマン魂に火がついた。
まもなく私も東京で社会人になったが、寮の行事のたびに、札幌に帰省し、彼らと寝食をともにした。
秋の恒例「赤フンパレード」では札幌の繁華街の交差点を占拠し、車も止めてフンドシ一丁の男たちが円陣を組んで踊るのだった。市民はそんな彼らを、暖かく見守っていた。