40年前というと大昔のような気がするが、私にはついこの前の出来事だ。
大学生となって上京し、物珍しさで東京の街の隅々をよく歩き回った。驚いたのは、どこか懐かしい木造家屋の家並みが、数多く残っていたことだ。特に下町界隈には生活感溢れる町並みが数多くあって、写真雑誌で見ていた木村伊兵衛さんの世界を追体験しに、時間ができるとカメラを持って、せっせと通った。
お気に入りの場所の一つは、上野駅の東側の界隈。ある日、学校で貸し出してもらった4x5版カメラ(昔、写真屋さんが布を被って撮っていた大型カメラ)を三脚に付け、色々な人に声をかけ撮影させてもらった。みんな気さくにモデルになってくれて、警戒する人など誰もいなかった。
そんな中、学校帰りの高校生の女の子を撮らせてもらった。K子さんと言ったか。キャビンアテンダントになりたいと夢を語っていたことが、今も記憶に残っている。その後、彼女はどんな人生を送ったのだろう。
あの街並みも今はもうない。