3度目のルーマニアだ。春、秋に訪れ、今回は雪景色を撮るためにやって来た。空港からブカレスト北駅へ。北の町に向かう列車のチケットを購入するため窓口に並んだ。
この際、カメラバッグは体の前に置くのが鉄則だ。それがどうしたことか、今回は体の横に置いてしまった。3度目という慣れがあったのだろう。チケットを購入し、さて出発と思ったら、カメラバッグが忽然と消えていた。逃げるドロボーの後ろ姿さえなかった。
警察に行ったら、「盗られたと言うが証拠はあるのか」と聞かれた。あいにく機材の持ち込みリストなどはなかった。大使館に助けを求めるにも、今日はすでに金曜日の夕方だ。選択肢は二つ。市内のカメラ店で代替の機材を購入するか、日本にすぐ戻り、準備を整え再度入国するか。
今期の雪景色を逃すと、来年まで待たねばならず、それだけは避けたい。カメラ店を回ったが、私の使う6x7の中判カメラは見当たらなかった。こんな時決まって「もう諦めたらどうだ」という、ささやきが聞こえてくる。だがそうはいかない。