標高3400メートルのクスコは、13〜15世紀に栄えたインカ帝国の首都だった。残念ながら現在その面影はない。今は有名なマチュピチュ遺跡への入り口という地位に甘んじている。
街を歩いていると息が苦しい。それもそのはず。富士山より少し低いだけ。空気も薄いはずだ。富士登山は平気だったが、ここでは自分の体が思い通り動いてくれない。特に階段は、わずか数段上がるだけでも肩でゼーゼーと息をする有様だ。
町外れのチンチェーロで毎週日曜に開かれる市に行った。今は観光客も大勢来るそうだが、当時は民族衣装を着た地元の人で賑わう素朴な市場だった。
トウモロコシ、トマト、ジャガイモ、カボチャ、ピーマンなど今は世界中で食する野菜も、元々はペルーが原産だ。そもそも何故こんな高地に住むのかといえば、低地より雨が多く湿潤で、作物の栽培に適している。リャマやアルパカなどの家畜を飼うのにも、良い気候なのだという。
酸欠の頭でぼんやりと眺める色鮮やかな民族衣装は、白日の夢のように感じられた。 (公明新聞6月3日付掲載)