20代の半ばに、憧れのスペイン一周の旅を決行した。まずは80キロ以上出すとエンストしてしまう、超安値の中古車を入手。車中に寝泊まりして旅費を節約し、スペイン中の美しい街を、全部見てやろうという無謀。若気の至りだ。
スペインの街はもともと、城塞都市として発達したところも多く、地形をうまく利用した街並みは、どこも個性的で、新しい街に着く度、ため息が出た。
スペインの南に位置するアンダルシア州は、北アフリカも目と鼻の先。かつてイスラムに侵略された歴史もあり、その時代の建築物も数多く残っている。独特の文化の香りが、撮影意欲を掻き立てる。有名なフラメンコも元々この土地のものだ。分離独立運動が起きた、バルセロナのあるカタルーニャ州とは別の国と言ってもいいほどだ。ヨーロッパ文化の多様性を実感する。
ここアルコス・デ・ラ・フロンテーラモ、アンダルシアの宝石とも言える街のひとつ。丘の上の旧市街を歩くと、ご覧のような細い路地が次々と現れ、さてどちらに進もうか、と悩むのも旅の楽しみだ。(公明新聞1月21日付掲載)