東西ドイツがまだ分断されていた1988年、ベルリンの壁を見に西ベルリンに入った。ここは東ドイツの中にぽつんと取り残された陸の孤島で、そこを取り囲んでいたのが、ベルリンの壁だ。この壁を感慨深く眺めた後、ここまで来たのだから、東ベルリンにも行ってみようと思い立った。西ベルリンから東ベルリンまでは列車で一駅。日帰りなら駅でビザを発行してくれる。 列車を降りて東の街に立った時の衝撃は、生涯忘れない。東京のように物に溢れた西の街から、わずか数百メートルの壁の向こうは、まるで時が止まったような空間だった。日曜のせいもあるが、街には人通りも少なく、路上駐車の車の行列もない。賑やかな看板もショーウインドーもない鉛色の街だ。4月とはいえ、あまりの寒さにカフェに飛び込んだ。朝からコニャックを飲んでいる若者たちが、用心深く近づいて来て、この国の閉塞感と、当時新風を吹き込んでいた旧ソ連のゴルバチョフ書記長に対する期待を語った。 まさか翌年ベルリンの壁が壊れるとは、一体誰が思っただろう。(公明新聞12月3日付掲載)
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Column & Information
by saito-r
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