こんな女の子たちが突然現れる。まるでおとぎ話のようだ。ここはルーマニア北部、マラムレシュ地方。周りを高い山々に囲まれた地形のせいもあって、外部の影響を受けづらく、今も昔ながらの農業を中心とした生活が営まれている。
農作業はほとんど機械化されておらず、ミレーの絵に出てくるような光景に、あちこちで出くわす。一日の農作業を終えた人たちの馬車が、ゆっくりと家路に向かう行列の風景は、中世にタイムスリップした感覚になる。
またこの地方には、美しい木造建築の教会が数多くある。日曜日には、正装した人々が集い、それもまた惚れ惚れと見とれてしまう風景だ。
お茶でも飲んでいきなさいと、民家に誘われた。室内は広くないが、カラフルな刺繍が部屋中に飾られていて、いつまでもここに居たくなるような、心落ち着く空間だ。BSアンテナのついたテレビはどこの家にもあり、世界の情報もしっかり把握している。でも昔ながらの生活を崩さない。これは頑固さではなく、むしろ彼らの柔軟性のように思えた。(公明新聞10月15日付掲載)