
誤解を恐れずに言えば、写真はフィクションだと思っている。現実の一部を切り取ってはいるが、それはあくまで個人の眼差しだ。同じものを撮っても、180度違うものにすることができることは、写真家は誰でも知っている。
節操なくあちこちで(撮り!)散らかしてきたが、私の中にずっと流れているテーマがある。「人生とはいいものだ」「人間捨てたものではない」ということ。時として、そうは思えなくなる時も、写真は私に勇気を与えてくれたし、見る方にも、そんな思いが伝わればと撮り続けてきた。
今回は中央アジア、ウズベキスタンのブハラ。ここはシルクロードの交通の要衝で、古代から栄えたオアシス都市。色鮮やかな民族衣装を着た女性が、街をよりエキゾチックなものにしてくれる。
チャイハナは、日本で言えば喫茶店。ベッドのような台の上で、お茶を飲みながら、おしゃべりをするお父さんの姿を、あちこちで見かける。あくせくといきている自分に、人生これで充分じゃないか、と問いかけられる一瞬だ。(公明新聞10月1日付掲載)