トビリシのそぞろ歩きは楽しい。旧市街はちょっとノスタルジックで、生活臭溢れる独特の木造建築が旅人の目を楽しませてくれる。 もっとも私が訪れた1999年は、政治的にも不安定な時期で、大きなホテルは全て難民収容所になっていて、民宿に宿泊した。目抜き通りには数メートルおきに警察官が立っていて、いちいち呼び止められるのが面倒になり、無視して通り過ぎたら、連行されるという出来事もあった。 トビリシでは国民的画家のニコ・ピロスマニの絵をぜひ見たいと思っていた。ジョージアの人々の生活を素朴なタッチで描いた、じんわりと心に滲みる作品だ。当時は古ぼけた博物館の一角に、展示スペースがあった。あいにく臨時休館で、フランスの展示から戻ってきたばかりの作品は、床の上に後ろ向きに立てかけてあった。 がっかりしている極東の旅人を、博物館の中年女性職員が哀れに思ったのだろう。何と一つ一つ表にして見せてくれた。ピロスマニの朴訥とした画風とともに、その時の親切が今も忘れられない。(公明新聞 7月2日付掲載)
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Column & Information
by saito-r
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