一昨年、キューバとアメリカの国交回復の知らせに、時の流れをしみじみと感じた。20年前に初めてキューバを訪れた時、国家指導者のフィデル・カストロは、ソビエト連邦という大きな後ろ盾を失っても、アメリカに対する強気の姿勢を崩してはいなかった。
とはいえ国民は大変だ。停電は日常茶飯事で、慢性的な物不足。建物はメンテナンスもできずボロボロだ。かつてアメリカと国交があった頃に走っていた、1950年代のアメリカ車が、修理を重ね大切に乗り継がれ、街はさながらビンテージカーの展覧会だった。
こんな状況でも、街の空気は明るく、路上演奏者たちの楽器の音色が街を華やかにしていた。カメラを向けると、みんなとびきりの笑顔をかえしてくれた。街で出会った少女に、写真を撮らせてと声をかけたら「ちょっと待って」と家に入って行った。戻ってきた少女は、メークをし、カーニバルの衣装を着て、キュートなレディーに変身していた。「こんな感じはどお?」ビンテージカーの上のポーズはご覧の通りである。(公明新聞6月4日付掲載)