ソビエト連邦が消えるなんて、誰が思っただろう。かつて宇宙に初めて人を送り、イデオロギーと核競争でアメリカと対峙していた超大国だ。ソ連邦崩壊後の1991年に、新生ロシア共和国は船出を始めた。
当時日本のテレビでは、混乱するロシア国民の生活ぶりが、毎日のように伝えられていた。激しいインフレと物不足。食料を買うために長い行列をつくる人々。何はともあれ、現場をこの目で見てみよう。東の玄関口、ウラジオストックから、シベリア鉄道で途中下車しながら、西へ向かう旅程を組んだ。厳しい旅を覚悟したが、ロシアに着くと、街の空気が思いの外穏やかな事に驚いた。貨幣経済の混乱はあるものの、むしろ監視社会から解放された、清々しい空気を感じた。
スーズダリはモスクワから北東約200キロ。古い教会や修道院が数多く残る、ロシアの原風景のような美しい村だ。ここにいると、日本で見たあの映像は何だったのだろうと、思わずにはいられなかった。2人の背中に未来の幸せを祈った。(公明新聞 5月21日付掲載)