高野公彦さん選巻頭秀歌の写真担当も今月が最後です。
高野先生が選ばれた短歌10作品が届くと、さてどうしようと写真選びが始まります。
月刊誌は季節を先回りするので、撮りおろしが難しいことが多く、7割がたはストック写真を探すことになります。これも漠然と探してはたどり着けないので、わずかな記憶をたぐり寄せて「そういえばあのとき撮っていたはず」と狙いを定めて探していきます。
記憶力には近頃とんと自信がありませんが、不思議とシャッターを切ったときのシーンというのは、10年前のことでも案外憶えているものですね。
映像化に悩む歌は、ひとまず放っておきます。歩いている時やお風呂の中で、パッと映像が閃くことが多く、そのときを待ちます。
撮りおろしの写真も出来上がると、約20点ほどをセレクトしプリントにします。
そこから掲載分5点を編集とデザイナーの方が選びます。全体の色味やバランスもあるので、気に入った写真が必ず使ってもらえるとは限りません。
こんなふうに毎月の誌面が出来上がります。
連載が終わるのはいつも寂しいですが、「終わりは始まり」
またどこかでお目にかかりましょう!

戯奴(わけ)がためわが手もすまに春の野に抜ける茅花そ食(を)して肥えませ
紀郎女「万葉集」巻八

寒い日といへど二階に八畳間敷込みをれば汗のしたたる
田丸英敏「屋上」

木の幹の右側だけが被る雪海からの風今日は強くて
国分良子「ぴいかんの空」