雑誌「一枚の繪」7月号のアトリエ訪問は、神戸の石阪春生さんです。
石阪さんは御年83歳とは思えない若々しさで、極細の面相筆で細かく描き込んでいくという、たいへん消耗の激しい画法で、緻密なお仕事を続けられています。さぞかし難しい方と思いきや、まわりの人には「きらくそうや」と言われる、おおらかなお人柄。
16歳の時、神戸大空襲を経験され、九死に一生を得て、阪神淡路大震災では、たまたまトイレに起きたおかげで、家具の下敷きにならなかったという強運の持ち主。空襲で丸焼けになった神戸の町で、真っ黒に焼け焦げた死体の山を見た石阪少年は、驚くほど何の感情もわかなかったと言います。「人間は自分が壊れないため、何も感じなくなるんです。そういう体験をしているから,より耽美的なものに向かうのかもしれない」
いつまでも若々しく制作される秘訣について「心が退屈すると絵が弱ると思うんです。つねに心が揺れていることが大事」
石阪さんのように歳を重ねられたら素敵だなあと、しみじみ思うアトリエ訪問でした。