塩野米松さんの「にっぽんの漁師」がちくま文庫として再出版されました。
これは2000年から2001年にかけて、日本全国の漁師の方13名の方から聞き書きをしたもので、カメラマンとして同行させていただきました。
日本の海は思っていた以上に疲弊していて、ショックでした。原因は分かっています。工業の発展を優先させて、稚魚が命を育む藻場がコンクリートの護岸になってしまったからです。その他、川を通して海に栄養を送り込む森林が痩せてしまったこと、漁船の機械化が進み、だだでさえ減り続けている水産資源に追い打ちをかけたこと、排水による水質汚染、などなどもさまざまな原因も考えられます。
当たり前のように食べている魚が、結構あやうい均衡で食卓に届いているのだということを、今一度考えさせられる、塩野米松さん渾身の一冊。
もう一冊は村田喜代子さんの「偏愛ムラタ美術館」(平凡社)
様々なジャンルの美術作品が、村田さん流の切り口でチョイス解説されています。
小説家の方はこうやって絵画を見ているのかと、その秘密にも触れられ、図録も満載の、とってもおもしろい本です。私も雑誌の連載中に、由布院や昭和新山などにご一緒させていただきました。
一冊の本から作家たちのオーラが立ち上ってくるような、すばらしい装丁は毛利一枝さんによるものです。