世界の路地裏 38 インド・ハイデラバード
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子供たちの働く姿を見ると、何かしら胸に疼くものを感じる。家業の手伝いもあれば、搾取に近い労働現場もあった。ここインドでも、あちらこちらで働く子供たちがいた。デリーの下町の理髪店では、客の髭剃りをする、小学校3年生ぐらいの小さな子がいた。ただその手並みは鮮やかで、客の評判もよかった。

ここハイデラバードの下町にも、中古の中古の自動車部品を再生する工場で働く子供たちがいた。大人と一緒に油まみれになって、汗を流していた。工場のボスが怖い顔で近づいて来て、「お前はユニセフの回し者か」と聞かれたので、ただの旅行者だと答えたら、撮影が許された。救いは当の子供たちが、大人に負けない仕事をしている自分たちに誇りを持っている姿だった。

ハイデラバードは近年、インドのIT産業都市として急成長している。新市街には世界のIT企業が巨大なオフィスビルを構え、バンガロールに続けと、しのぎを削っている。児童労働と最先端のITが同じ街に同居しているのも、今のインドの現実だ。
(公明新聞9月16日付掲載)

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# by saito-r | 2018-09-21 16:27
世界の路地裏 37 中国・北京
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路地の真打ちは、北京の胡同(フートン)だろう。巨大ビルが増殖する北京にあって、一歩裏に回ると、元、明、清の時代に出来た四合院と呼ばれる建物の周りに、無数の路地が張り巡らされている。

ここには庶民の生活の全てがあり、ただ歩いているだけでも退屈することがない。道端で野菜を並べる人々、小商いをする店、麻雀に興じる人々、ススで真っ黒な顔をして練炭を売り歩く男、井戸端会議のおばさん、リタイアした老人たちもいい顔をして座っている。
残念なことに2008年の北京オリンピック前後には、再開発の名の下、その多くが破壊されたが、幸い一部の胡同は命拾いした。

夕方、家の前にコオロギの入った容器をたくさん並べ、その餌を作っている男がいた。中国には闘蟋(とうしつ)と呼ばれるコオロギ相撲の伝統があり、千年以上の伝統があるそうだ。強い雄を育てるため、餌にも気を配り、大切に育てるのだ。働き盛りの男が、こんなことに熱中するのも中国の懐の深さか。
何はともあれ、胡同は今も北京っ子の大切な心の故郷なのだ。
(公明新聞9月2日付掲載)

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# by saito-r | 2018-09-05 08:43
世界の路地裏 36 ロシア・サハリン州
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サハリンには何度も訪れたが、初めて行った1992年のことが印象深い。北海道の宗谷岬から、わずか43キロのこの地は、当時近くて遠い所だった。
旧樺太住民の墓参団の船に、稚内から一緒に乗船させてもらった。戦後命からがら引き揚げて来た方々も、すでに高齢になっていた。

コルサコフ港に到着すると、ポロナイスク(敷香)の墓参団と一緒にマイクロバスに乗り込んだ。車窓には、宇宙にロケットを飛ばす国とは思えない貧しい光景が広がっていて、衝撃を受けた。
バスに2日間揺られてポロナイスクに到着。今は何もないこの町も、以前は日本最北町として、防衛の重要な拠点だったという。昭和の大横綱大鵬も、ここで生まれている。

墓参団の方々は、かつての面影が全くないふるさとに、落胆を隠せなかった。墓石すら残っていなかった。
私はまた違う感慨に打たれていた。植生といい、木造家屋が立ち並ぶ光景は、私が子供の頃の、ふるさと北海道の風景そのものだった。出会った少年と少女の姿に、幼い頃の私と妹の姿が重なった。(公明新聞8月19日付掲載)

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# by saito-r | 2018-08-21 14:01
世界の路地裏 35 ボスニア・ヘルツェゴビナ モスタル
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サッカーワールドカップのヨーロッパのチームを見ても、様々な人種の移民によってチームが構成されていることが分かる。国家ももはや、多民族の融合という大きな流れを誰にも止めることはできない。

しかしわずか20年ほど前に「民族浄化」などというおぞましい言葉が、テレビや新聞に踊ったことがあった。その舞台の一つがこのモスタルだ。旧ユーゴスラビア解体を受け、独立を巡ってムスリム人、セルビア人、クロアチア人のごく普通の市民が、血で血を洗う戦闘を繰り広げたのだ。

3年に渡る内戦は1995年には終結した。だが訪れた1998年、街はまだ銃撃戦で弾痕まみれになった廃墟が、幽霊のように佇んでいた。その傷跡には深い憎しみと狂気が宿っていて胸が痛んだ。旧市街にかかるオスマン建築の名橋、スタリ・モストも破壊され、仮説の吊橋がかかっていた。

この橋も2004年には復興。24メートル下のネレトヴァ川に飛び込む祭りも再開され、世界中から観光客が集まっているそうだ。(公明新聞8月5日付掲載)

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# by saito-r | 2018-08-10 08:49
世界の路地裏 34 カンボジア・アンコール遺跡
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1991年のカンボジアは、内戦は終わったものの、まだ観光というにはほど遠い状況だった。落ち延びたポル・ポト派が砦としたアンコール遺跡群は、石組みも崩れ、首をはねられた仏像が転がっている姿には胸が痛んだ。地雷もまだ多数残っているのだという。観光客はなく、遠巻きに地元の子供たちが私を眺めているだけだ。廃墟のような景色に佇んでいると、人間の凄さ、愚かさ、悲しみが立ちのぼって来る。

アンコールの寺院は、元々はヒンズー教だったが、12世紀に仏教寺院への改宗があり、その後も王が変わるたびに、歴史の波に翻弄されてきた。2001年にはバンテアイ・クデイ遺跡の地中から、800年の眠りから覚めた274体の廃仏が発見され話題になった。

有名なアンコールワット遺跡の周辺には、王が変わるたびに様々な寺院が建立され、北東に位置するプレループ遺跡も、そのうちの一つだ。虚空を見上げる獅子は、何百年もの間、ここで繰り広げられた人々の営みに寄り添ってきた。今は多くの観光客を魅了している。(公明新聞7月29日付掲載)

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# by saito-r | 2018-08-02 16:31



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