世界の路地裏 9 パキスタン・フンザ
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「桃源郷」という言葉が、これほど相応しい所はない。フンザはパキスタンの北部。周りをインド、中国、アフガニスタンに囲まれる東西交通の要所だ。7000メートル級の山々の懐に抱かれるように、小さな村が点在する。約40年前までは、藩王が統治する独立国だった。

世界が狭くなった今も、フンザへの道のりは険しい。近くの町まで飛行機もあるが、天候不良で飛ばないことも多く、ほとんどの人は、首都イスラマバードから、陸路カラコルムハイウェイを丸2日間かけて走ることになる。ゴツゴツとした殺風景な岩肌を、車窓から見続けたあと現れる、美しい段々畑や木々の緑。いにしえの旅人たちは、どんな思いで眺めたのだろう。

私は春と秋に訪れている。実り豊かな収穫の秋も素晴らしいが、何といっても、杏の花が咲き、村が薄桃色に包まれる春はまた格別だ。電気が来るまでは、杏の種から抽出する油が貴重なランプの燃料だった。また実は乾燥して保存食となる。時おり遠くの山々からドーンという雪崩の音が聞こえてくる。(公明新聞 7月30日付掲載)

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# by saito-r | 2017-08-02 17:35
世界の路地裏 8 アラスカ・バロー
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アラスカ州最北の町バロー。流氷は8月まで居座り、10月にはまた戻ってくる。平均気温が零度を上回るのは6,7,8月の3ヶ月だけという厳しい気候だ。訪れた6月は、まだ海は流氷で覆われ、雪原になっていた。
住民の半数強はイヌイットで、元々、鯨や海獣、カリブーを獲って暮らしていたが、近年はその生活も随分変化しているようだ。

町を歩いていたら、鯨の解体作業に出くわした。体長20メートルもあったということだが、すでに50センチ角の肉片になっていた。体格のよい若い女性が、長さ30センチ、幅20センチもある包丁を、鮮やかな手さばきで使いこなして、肉片がどんどん細かくなっていく。
「一口いかが」と勧められ、肉片を食べてみた。無味で硬く、お世辞にも美味しいとは言えない。困った顔をしていたら、みんなで大笑いになった。

写真はアザラシなどの皮を使い、トランポリンのように高く舞い上がるブランケット・トス。元々は沖の鯨を見るための方法だったとか。
短い夏に歓声が響き渡っていた。(公明新聞7月16日付掲載)

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# by saito-r | 2017-07-22 09:57
世界の路地裏 7 ジョージア・トビリシ
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トビリシのそぞろ歩きは楽しい。旧市街はちょっとノスタルジックで、生活臭溢れる独特の木造建築が旅人の目を楽しませてくれる。

もっとも私が訪れた1999年は、政治的にも不安定な時期で、大きなホテルは全て難民収容所になっていて、民宿に宿泊した。目抜き通りには数メートルおきに警察官が立っていて、いちいち呼び止められるのが面倒になり、無視して通り過ぎたら、連行されるという出来事もあった。

トビリシでは国民的画家のニコ・ピロスマニの絵をぜひ見たいと思っていた。ジョージアの人々の生活を素朴なタッチで描いた、じんわりと心に滲みる作品だ。当時は古ぼけた博物館の一角に、展示スペースがあった。あいにく臨時休館で、フランスの展示から戻ってきたばかりの作品は、床の上に後ろ向きに立てかけてあった。

がっかりしている極東の旅人を、博物館の中年女性職員が哀れに思ったのだろう。何と一つ一つ表にして見せてくれた。ピロスマニの朴訥とした画風とともに、その時の親切が今も忘れられない。(公明新聞 7月2日付掲載)

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# by saito-r | 2017-07-07 11:20
世界の路地裏6 イタリア・シチリア島
ご存知シチリア島は、長靴型のイタリアの爪先。島と言っても面積は四国の約1.4倍なので、島というイメージとは随分違う。
シャッカという小さな漁村の夕方、男たちが、カード遊びに興じている。まるで映画のワンシーンのようだ。イタリアではこんなかっこいい光景を度々目にする。

イタリアは北と南では別な国のようだ。経済的に豊かで、洗練された北に比べられるが、南のいぶし銀のようなオヤジたちも素敵だ。北イタリアでは、夕方になると仕事を終えた中年の男女が、おしゃれな洋服に身を包み、バールでグラッパ(葡萄の搾りかすで作る蒸留酒)を飲んでいる姿をよく見かける。

一方シチリア島の男たちも、仕事が終わると、家族で食卓を囲む人、酒場へ繰り出し、すこぶる美味しい店特製の安ワインを飲み、愉快に語らう人がいる。スタイルは違うが、人生を楽しもうというラテン気質は同じだ。
仕事を離れた時、どんな仲間や趣味、生活を持っているか。人生の指標ここにあり。私はイタリア人に学ぶべきことが多いようだ。(公明新聞 6月18日付掲載)
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# by saito-r | 2017-06-21 09:03
世界の路地裏5 キューバ・ハバナ
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一昨年、キューバとアメリカの国交回復の知らせに、時の流れをしみじみと感じた。20年前に初めてキューバを訪れた時、国家指導者のフィデル・カストロは、ソビエト連邦という大きな後ろ盾を失っても、アメリカに対する強気の姿勢を崩してはいなかった。
とはいえ国民は大変だ。停電は日常茶飯事で、慢性的な物不足。建物はメンテナンスもできずボロボロだ。かつてアメリカと国交があった頃に走っていた、1950年代のアメリカ車が、修理を重ね大切に乗り継がれ、街はさながらビンテージカーの展覧会だった。
こんな状況でも、街の空気は明るく、路上演奏者たちの楽器の音色が街を華やかにしていた。カメラを向けると、みんなとびきりの笑顔をかえしてくれた。街で出会った少女に、写真を撮らせてと声をかけたら「ちょっと待って」と家に入って行った。戻ってきた少女は、メークをし、カーニバルの衣装を着て、キュートなレディーに変身していた。「こんな感じはどお?」ビンテージカーの上のポーズはご覧の通りである。(公明新聞6月4日付掲載)

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# by saito-r | 2017-06-07 15:34



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