世界の路地裏 18 中国・香港
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初めての海外の旅は23歳で行った香港。まだ英国主権の頃だ。憧れのカンフースター、ブルース・リーの映画の舞台地を見たいという、ミーハーな動機だった。街の喧騒と混沌にたちまち魅せられ、夢中で歩き回った。

この旅の一番の目的は九龍城砦。「東洋の魔窟」と言われた高層スラムだ。日本の友人から紹介された現地の若者に、その旨を伝えたら「どうしてあんなところに行きたいの」と嫌な顔をされた。ここは、麻薬、賭博、売春などの巣窟で、危険人物も逃げ込んでいるという噂があったからだ。
「そんなに行きたいなら案内するけど、カメラはダメだよ」私は素直に従い、彼と迷宮に入り込んだ。

窓のない部屋が多いせいか、ドアを開け放している人も多く、中が丸見えだった。狭い室内には案外普通の人が暮らしていて、少し拍子抜けした。入れ歯の模型がずらりと並んだ歯医者さんが何軒もあり、怪しい雰囲気を醸し出していた。
写真は撮れなかったが、この時私の旅心が着火した。
その九龍城砦も1994年には取り壊された。(公明新聞11月19日付掲載)



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# by saito-r | 2017-11-22 16:33
世界の路地裏 17 ウクライナ・チェルニウツィ
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1993年、ソビエト連邦から2年前に独立したウクライナを訪れた。突然の社会変革は、様々な所に機能不全を招き、人々もそれに立ち向かう勇気をなくしているように見えた。一方のロシアが、明るく未来に向かうエネルギーを発していただけに、その明暗に衝撃を受けた。

重たい気持ちを抱え、列車の乗り継ぎで降りた古都チェルニウツィは、そんな気持ちを晴らしてくれる気持ちのよい街だった。ここはウクライナの西に位置し、ルーマニアのすぐ隣だ。歴史を振り返っても、いろいろな国が統治していたので、様々な建築様式の建物を見ることができる。

街歩きに疲れた時は公園に行く。公園といっても、ここはとてつもなく広く、まるで森のようだ。折しも木々の葉は黄金色で、森を明るく染めている。少女たちが落ち葉を拾い髪飾りを作っていた。
あれから24年。この子たちも素敵なレディーになっていることだろう。そしてウクライナは今も政治の波に翻弄され続けている。(公明新聞11月5日付掲載)

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# by saito-r | 2017-11-08 08:36
世界の路地裏 16 ポルトガル・ナザレ
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車でスペインからポルトガルに入ったら、空気が変わった。独特の哀愁があって、日本に近いものを感じた。これがサウダーデというやつか。

気になる村を見つけたら、迷わず入っていく。村の中央広場で車を降りるとその周辺のにいた十数名の村人が、全員私を凝視する。スペインの村なら「オーラ」(こんにちは)といえば、向こうも手を上げてくれるところだが、ここはそんな雰囲気でもない。かと言って拒絶されているわけでもなさそうだ。
遠慮がちにノロノロ動き出すと、みんなの視線が私を追ってくる。この好奇の視線に耐えられず、村を後にしたことも度々あった。私もまだナイーブな若者だったのだ。

ナザレはちょうどポルトガルの中央部に位置する漁師町。昼下がり、白い砂浜には、ゆったりとした足取りで荷を運ぶ女性や、漁師の男たちが網を繕ったり、横になってぼんやりと海を見ていたり、いい時間が流れていた。
私も旅の緊張を解きほぐし、鰯の塩焼きにかぶりついた。オリーブオイル料理に疲れたお腹に染みわたった。(公明新聞10月29日付掲載)


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# by saito-r | 2017-11-01 11:25
世界の路地裏 15 ルーマニア・マラムレシュ地方
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こんな女の子たちが突然現れる。まるでおとぎ話のようだ。ここはルーマニア北部、マラムレシュ地方。周りを高い山々に囲まれた地形のせいもあって、外部の影響を受けづらく、今も昔ながらの農業を中心とした生活が営まれている。

農作業はほとんど機械化されておらず、ミレーの絵に出てくるような光景に、あちこちで出くわす。一日の農作業を終えた人たちの馬車が、ゆっくりと家路に向かう行列の風景は、中世にタイムスリップした感覚になる。
またこの地方には、美しい木造建築の教会が数多くある。日曜日には、正装した人々が集い、それもまた惚れ惚れと見とれてしまう風景だ。

お茶でも飲んでいきなさいと、民家に誘われた。室内は広くないが、カラフルな刺繍が部屋中に飾られていて、いつまでもここに居たくなるような、心落ち着く空間だ。BSアンテナのついたテレビはどこの家にもあり、世界の情報もしっかり把握している。でも昔ながらの生活を崩さない。これは頑固さではなく、むしろ彼らの柔軟性のように思えた。(公明新聞10月15日付掲載)

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# by saito-r | 2017-10-17 17:27
世界の路地裏14 ウズベキスタン・ブハラ
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誤解を恐れずに言えば、写真はフィクションだと思っている。現実の一部を切り取ってはいるが、それはあくまで個人の眼差しだ。同じものを撮っても、180度違うものにすることができることは、写真家は誰でも知っている。

節操なくあちこちで(撮り!)散らかしてきたが、私の中にずっと流れているテーマがある。「人生とはいいものだ」「人間捨てたものではない」ということ。時として、そうは思えなくなる時も、写真は私に勇気を与えてくれたし、見る方にも、そんな思いが伝わればと撮り続けてきた。

今回は中央アジア、ウズベキスタンのブハラ。ここはシルクロードの交通の要衝で、古代から栄えたオアシス都市。色鮮やかな民族衣装を着た女性が、街をよりエキゾチックなものにしてくれる。

チャイハナは、日本で言えば喫茶店。ベッドのような台の上で、お茶を飲みながら、おしゃべりをするお父さんの姿を、あちこちで見かける。あくせくといきている自分に、人生これで充分じゃないか、と問いかけられる一瞬だ。(公明新聞10月1日付掲載)

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# by saito-r | 2017-10-03 15:58



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