アラスカ州最北の町バロー。流氷は8月まで居座り、10月にはまた戻ってくる。平均気温が零度を上回るのは6,7,8月の3ヶ月だけという厳しい気候だ。訪れた6月は、まだ海は流氷で覆われ、雪原になっていた。
住民の半数強はイヌイットで、元々、鯨や海獣、カリブーを獲って暮らしていたが、近年はその生活も随分変化しているようだ。
町を歩いていたら、鯨の解体作業に出くわした。体長20メートルもあったということだが、すでに50センチ角の肉片になっていた。体格のよい若い女性が、長さ30センチ、幅20センチもある包丁を、鮮やかな手さばきで使いこなして、肉片がどんどん細かくなっていく。
「一口いかが」と勧められ、肉片を食べてみた。無味で硬く、お世辞にも美味しいとは言えない。困った顔をしていたら、みんなで大笑いになった。
写真はアザラシなどの皮を使い、トランポリンのように高く舞い上がるブランケット・トス。元々は沖の鯨を見るための方法だったとか。
短い夏に歓声が響き渡っていた。(公明新聞7月16日付掲載)